ラッキーな社長③
こんにちは。㈱昭和技研工業の岩井です。近江商人の商売の心得に、『三方よし』という言葉があるそうです。売り手良し、買い手良し、世間良し。売り買い双方が満足し、且つ 社会にも貢献するのが、良いビジネスであると。
T社 経営破綻の一報が届いたのは、リーマンショックから約8ヶ月後の、2009年5月のこと。景気回復の兆しは一向に見えず、弊社も、必達ノルマ比 65.4%と、仕事量確保に苦しんでいた頃の話。T社の財務内容が芳しくないとの噂は、前々から耳にしていましたが、年商で10億円も売り上げていた老舗の、突然の倒産に、お客様は大混乱に陥りました。『技術のT』を名乗るだけあって、手の込んだ、特殊な設計製作品の比率が高く、弊社営業窓口には、問い合わせの電話が殺到。我々も一品料理は得意としていましたが、何せ情報が足りない。個別の仕様が分からなければ、手の付けようがありません。
そんな時に私たちに手を差し伸べてくれたのが、T社の破産管財人を務めていらした、弁護士の先生です。先生曰く、製品図面等の技術情報こそが、会社に残された最後の財産。元社員の皆さんが、寝ずの番でそれを守っているので、それをお金に換えて、彼らの未払い給与に充てたいと(CADが既に一般化していた当時も、T社は図面の原本を、紙ベースで管理していました)。 オークションの末、我々が図面を落札。7月24日、正式に『機械図面等譲渡契約書』を取り交わして、『三方よし』。破産管財人様の素晴らしい采配で、私たちも、お客様も、元T社従業員の方々も、全ての関係者が納得し、等しく利益を得ることが出来た訳ですね。
この話、多くの方が仕事を失った訳ですから、ラッキーな事例として取り上げるには、相応しくなかったかも知れません。図面を守り抜いた、元T社の皆さん、今も元気に活躍してくれていると嬉しいなぁ。そう言えば、先日、浅草寺で、おみくじを引きましたけど、結果は『吉』でした。まあまあラッキーな社長も、悪くないでしょ?
※脱字が有りましたので、修正しました。