しばらくコロナとどう生きる⑫
こんにちは。㈱昭和技研工業の岩井です。前回取り上げさせて頂いた『地域脱炭素ロードマップ』骨子(案) の中に、『ナッジ』という聞き慣れない言葉を見つけました。「『ナッジ』を活用し、日常シーンの中に、省エネ・公共交通利用・環境配慮製品の選択を…」と有ります。『ナッジ』とは何なのでしょうか?
英語で『ナッジ(nudge)』とは「(肘で突いて)そっと後押しする」という意味で、「しつこく文句を言う」という意味の『ナッグ(nag)』と対を成す言葉です。要は『北風と太陽』、強制でなく自発的に行動変容を起こさせる時に効果的なのが この『ナッジ』で、2017年にリチャード・セイラー氏がノーベル経済学賞を取って以降、一般にも知られるようになって来ました。世の中は既に『ナッジ』で満ち溢れています。最近の例で言えば、コンビニエンスストアの床にあるレジ待ちの足跡。コロナ禍に於いても自然と、ソーシャルディスタンスが取れるように工夫されています。脱炭素社会の文脈にも、この手法を取り入れて行こうという訳ですね。
人間は意思決定に伴う疲労感や負担感を嫌い、直感や感情に訴えかけるイメージや表現に誘導され易い特徴も有るそうです。このような人類の心理特性を悪用することを、『スラッジ (sludge) =汚泥』と言います。スプラリミナル効果を狙った広告(サブリミナル効果が無意識に訴えるのに対し、目に見える形で購買意欲を掻き立てる)、世論を動かすフェイクニュースにプロパガンダ、パラメーターを入れ替えるだけで自らの主張に都合の良い未来予想を描く数理モデル 、陰謀論。『ナッジ』とも『スラッジ』とも判断の付かない大量の情報に囲まれて生きる私たち、コロナ禍の自粛生活の長引く中 、物事を理性的に熟慮する能力は既に奪れてしまっているかも知れません。時の政権が公けの目に触れる文書内で『ナッジ』という用語を平気で使うことに、”得体の知れない薄気味悪さ” とマキャヴェリストとしての “センスの悪さ” を感じるのは、果たして私だけでしょうか。
さて、リチウム資源確保に苦戦する日本勢に救世主。日本発、EVの走行距離を飛躍的に伸ばすポテンシャルを秘めた、パワー半導体の生産がスタートしました。床一面に大容量のバッテリーを敷き詰める必要が無くなるどころか、二次電池開発競争に終止符を打つ程の強烈なインパクトを持つ製品です。産業界に必要な答えを出してくれるのは、いつだって産業界なのです。
