社長、荒川を語る④
こんにちは。㈱昭和技研工業の岩井です。先日、東武アーバンパークラインに、初めて乗ってみました。昔は、東武野田線と呼ばれていた路線で、大宮~柏・船橋を繋ぐ環状線です。大宮生まれ大宮育ちの私には、馴染みの電車ですが、呼び名が変わってから、乗るのは今回が初めてです。現在は、急行・快速運転もあって、私の実家の最寄り駅には停まらず、大宮から岩槻まで8分、春日部まで15分と、とっても便利。車窓からの眺めは昔と変わらず、大宮公園を過ぎると、懐かしい見沼の田園風景が広がります。ま、正確に言うと、この辺りは野菜畑なんですけどね(笑)。春日部駅で、南北に走る東武スカイツリーラインに乗り換えて、その日の目的地は、せんげん台。このまま乗れば、隅田川の流れる浅草にも行けるみたいですから、今度、時間に余裕のある時にでも、電車の旅を楽しんでみようと思います。
さて、1629年の荒川西遷と1654年の利根川東遷事業、そして、1930年の荒川放水路の完成を以てしても、水との戦いは終わらなかったようです。何故なら、洪水対策とは表と裏、増え続ける江戸・東京の人口を養う為、今度は、農業用水や飲み水の確保等、渇水対策が必要となったんです。荒川の水源から切り離された綾瀬川と元荒川の西側は、水が不足気味で、八代将軍吉宗の享保期、1727年に芝川、1728年に見沼代用水を通し、利根川から農業用水を確保。先程お話しした、埼玉県の原風景とも呼べる、『見沼田んぼ』の新田開発が進みました。人口の急増した、戦後の高度経済成長期には、『治水』派と『利水』派で激論の末、1967年、利根大堰から武蔵水路を開削。結局、利根川と荒川を再び繋いで、埼玉県民・東京都民の飲み水を確保することになりました。東京都の水道水の約78%は、荒川から引いていると申し上げましたが、実はその約半分が、利根川から供給されている水なんですよ。取水口の周辺は、秋ヶ瀬取公園として整備され、埼玉県民 憩いの場所となっていて、2003年と2011年に、アザラシが現れたのも この辺りです。
一方、東武スカイツリーラインの走る、綾瀬川と元荒川の東側はと言うと、一旦水が出るとなかなか引かない、独特の窪んだ地形。こちらには、総工費2,300億円を掛けて、2006年に世界最大級の地下放水路が完成。映画やドラマの撮影にもしばしば活用される、『地下神殿』です。総貯水量は67万立方メートル。総延長6.3キロの地下トンネルで、西から東の順に、古利根川・幸松川・倉松川・中川・第18号水路と、5つの河川を繋ぎ、大雨の際は、春日部の近隣地域を、浸水被害から守ります。貯められた水は、埼玉・千葉の県境を流れる江戸川に排水。ゆっくり4日間掛けて空にするので、下流域に悪影響を与えることは、無いそうです。正式には、首都圏外郭放水路。2018年8月からは、一般向けの見学会もスタートしました。1人 1,000円で、所要時間は約1時間。要予約です。
と言う訳で、地元を代表する河川の1つ、荒川の数奇な運命を通して、我が生まれ故郷 埼玉について、4回に渡って語って参りました。豊かな水に恵まれていると言うことは、酒造りにも好都合。埼玉には35の蔵元が有って、清酒の出荷量に於いては、全国有数の酒処です(苦笑)。その埼玉県勢が、今年5月にロンドンで開かれた、世界的ワインコンテストで大躍進。 IWC 2019 の『SAKE部門』では、9つのカテゴリーに、432社から1,500銘柄が出品される中、『大吟醸酒』と『古酒』の 2部門で、埼玉の銘柄がトロフィーを獲得。惜しくも、『CHAMPION SAKE』のタイトルは逃しましたが、水と戦いながらも、水と共に生きてきた埼玉勢が、味の面でも、世界レベルの実力を証明してくれました。令和最初の暑気払いは、埼玉の冷酒も、是非、一杯 味わってみて下さい。