社長ブログ

社長、水素で走る④

こんにちは。㈱昭和技研工業の岩井です。「消費税の軽減税率によって、『テイクアウト』の比率を増やさないと、飲食店は『中食』産業に負けてしまう」との議論が有り、生き残りを賭け、各社こぞって対策を講じていらっしゃいます。包み隠さず申し上げるならば、お持ち帰り用の使い捨てプラスチック容器の使用量が増えれば、弊社にとっては或る種のビジネスチャンス。そうは言っても、環境・資源問題を考慮するならば、時代の流れに逆らうような行き過ぎは禁物です。『外食』か『中食』か、あとは消費者の皆さんに、判断を委ねるしかありません。

さて、前々回のHVのお話でも触れましたが、車載用エンジンが、今後消えて無くなる運命にあるとは、私は考えていません。たとえ、ノーベル化学賞を受賞した吉野彰さんの発明した、リチウムイオン電池がどんなに優れていたとしても、エンジンは回し続けなければなりません。何故なら 私たちは、ガソリンや軽油を消費し続けなければならないから。今回は、2017年11月に取り上げた話。もし、共感頂けるようであれば、SNSの投稿に『いいね』下さい(笑)。

現在の自動車エンジンは大きく分けると、ガソリンで走るガソリン・エンジンと軽油で走るディーゼル・エンジン。ガソリンや軽油は原油を精製して作られます。製油所に運ばれてきた原油は、先ず約350℃に加熱し石油蒸気となります。その蒸気を冷やすと成分ごとに沸点の違いによって、ガソリン・軽油・灯油・重油等に分けられます。これらの石油製品は、原油を精製する際に同時に生産されるので、『連産品』と呼びます。一回の精製で出来る『連産品』の割合は、原油の種類(産地)によってほぼ決まっており、日本が主に輸入している中東産の原油(重質油)からは、およそ、ガソリン24.5%、軽油19.2%、C重油16.4%、A重油12.1%、灯油11.7%、ナフサ7.8%、ジェット燃料油4.7%、潤滑油・その他3.6%の割合で、『連産品』が作られるそうです。

ナフサはプラスチックだけでなく、合成樹脂・合成ゴム・化学肥料・塗料等の原材料として使われます。重油は燃料として使うほか、舗装用のアスファルトの原料にもなります。軽油、日本ではディーゼル車の割合が低いので、余った軽油は海外に輸出されています。軽油と灯油の違いは沸点で、軽油の沸点が240~350℃なのに対し、灯油は170~250℃と低く、灯油はむしろジェット燃料油に近い成分です。因みに、ミサイルの燃料として使われる『ヒドラジン系』の有害化学物質は、原油由来のジェット燃料油とは別物です。合成するのが非常に難しいのですが、2017年9月頃、北朝鮮が自国での生産に成功したのではないかと報道されました。原油を精製する過程では、一定の割合で『副産物』も生成されますが、水素を含む化合物もその一つ。現在は使い道もなく、ただ燃やされているその量は、FCV  840万台分の水素に相当するとのこと。日本がFCVの普及に力を入れているのは、余った水素を『連産品』として有効活用する為なのです。

と言う訳で、何が言いたいかと申しますと、仮に自動車の動力の主流が電気になり、ガソリン・軽油が不要になっても、プラスチック・合成ゴム・化学肥料・塗料・潤滑油・アスファルト等、石油由来の製品の需要がなくなる訳ではないので、その原材料の供給を止めることは出来ません。例えば、摩擦低減や摩耗防止の為、潤滑油やグリースは、あらゆる機械製品にとって必須、なくすことは出来ません。結果、使う当てもなく大量に生産されるガソリン・軽油を、『副産物』として無駄に捨てる(≒燃やす?)訳にも行きませんし、大量の可燃性の液体を、最終処分方法を決めないまま、安全性を確保しながら保管・貯蔵し続けることも、現実的かどうか疑問です。水素同様、貴重な資源の一つとして、有効活用すべきなのです。勿論、燃やす以外の使い道が見つかれば、大いに結構。その受け皿の一つとして考えられるのが、やはり車載用エンジン。動力源か発電機か、どちらの役割がメインになるかは分かりませんが、エンジンを積んだ自動車が、この世から100%姿を消してしまうとは、私には考えられません。燃費を向上させたり、大気汚染物質を抑制したりする技術は、これからも研究を続ける必要のある分野だと思います。

私の知る限り、今やEVには欠かせないリチウムイオン電池自体、石油由来の素材なしには作れません。食事にしても環境問題にしても、何事もバランスが肝要かと。

※一部、加筆修正しました。

社長、水素で走る③

こんにちは。㈱昭和技研工業の岩井です。先ずは、台風の被害に遭われた皆さんに、お悔やみ申し上げます。そんな中、ブレイブ・ブロッサムズの劇的勝利は、私たちに勇気を与えてくれました。更に上を目指す、彼らの活躍に期待すると共に、被災地の復旧・復興に向け、力を合わせて頑張りましょう。

さて、11月2日(土) 、横浜では、ラグビー世界一を決める試合が行われますが、同じ日、埼玉県行田市でも、埼玉県代表の座を掛け、高校生たちの熱い戦いが繰り広げられます。全国の高校生たちが、理科・数学・情報の分野で競争を繰り広げる『科学の甲子園』、今年度で、第9回大会を迎えます。私たちがサポートするのは、今回で2度目。7~9回と、全国大会が埼玉県で開催される縁も有って、将来の日本の科学技術を支える、若者たちの活動を応援しています。2019年4月の朝礼では、全国大会の様子を取り上げさせて頂きましたので、今回はそのお話。もし、共感頂けるようであれば、SNSの投稿に『いいね』下さい(笑)。

第8回『科学の甲子園』の全国大会、県予選を勝ち抜いた47チームが埼玉に集結、筆記競技と3つの実技競技で、その力を競い合いました。その様子は、公式WEBサイトにて、動画配信されましたので、競技の様子をご覧になった方も、いらっしゃるかも知れませんね。私は、初日の開会式と、最終日のシンポジウム・表彰式に、参加させて頂きました。開会式の選手入場は、それぞれのチームが個性的で、会場は大いに盛り上がりました。大会の結果は、愛知県代表 K校が、3年ぶり2回目の総合優勝。連覇を目指した神奈川県代表 E校は、涙の総合第2位。3位には、滋賀県代表 S校が入りました。皆さん、おめでとうございます。地元の埼玉県代表であり、私の母校でもある U校は、惜しくも入賞を逃し、総合第11位。企業特別賞の『埼玉県経営者協会賞』に輝きました。協賛企業として、私がプレゼンターを務めた『昭和技研工業賞』は、兵庫県代表T校が獲得。埼玉県の中小企業を代表して、このような機会を頂き、私としては身に余る光栄です。

さて、大会終了から1週間後、私の実家から、思いも寄らぬ知らせが入ります。なんとなんと、T校のメンバー1人が、第二創業初期から、長年に渡って営業面で弊社を支え続けた、大先輩のお孫さんだったと言うのです!!お孫さんから報告を受けた娘さんが、『昭和技研工業賞』に気付いて、ご本人の耳に入り、ご本人から、私の実家に連絡が入ったみたいです。いやぁ、世間は狭いと言うべきか、不思議な『ご縁』って、有るものなんですね。正直、驚きました(笑)。

開会の挨拶で、大会主催の科学技術振興機構さまから、こんな話がありましたので、最後に紹介させて下さい。科学者として、未来を切り開くのに必要な力とは、何か?答えは、①質問力、②観察力、③ネットワーキング力、④実験力、⑤関連付ける力、そして⑥『勇気』の 6つだそうです。①質問力とは、トヨタ生産方式にもある、何故・何故・何故を5回繰り返す、あれです。②観察力とは、物事を偏見無しに、客観的に見極める力ですね。③ネットワーキング力とは、人脈作りです。自分とは違う分野の専門家と、自由に意見交換できる環境を作ることは、非常に大切です。④実験力とは、新しい方法にチャレンジして、試行錯誤する能力のことだそうです。⑤関連付ける力とは、①~④で得られる一見 関係のないデータに関連性を見出し、新しいものを生み出す、クリエイティブな能力です。そして、最後に付け加えられたのが⑥『勇気』、つまり一歩前に踏み出す力です。人間、頭では分かっていても、なかなか行動に移せない事って多いですよね。どんなに優れた科学者であっても、最終的には、この⑥『勇気』がないと、イノベーションは起こせないという訳です。

第9回『科学の甲子園』、埼玉県予選は 11月2日(土)に、全国大会は年明けて、 3月20日(金)~23日(月)に行われます。今年はどんなドラマが彼らを待ち構えているのか、期待しましょう。

※誤字・脱字が有りましので、修正しました。

社長、水素で走る②

こんにちは。㈱昭和技研工業の岩井です。過去の朝礼の原稿を読み返してみると、科学技術は確実に進歩していると感じます。同時に、「時代の要請は常に変化するものだ」ということも、見て取れます。16歳の少女に「裏切るなら絶対に許さない」と強い口調で訴えられ、少々戸惑いは有りますが、2019年7月、世界最大の自動車市場である中国が、ハイブリッド車(HV)優遇への方針転換を検討し始めて以降、エコカーを取り巻く環境は、再び大きな転機を迎えました。EVが限界を露呈する中、限りある資源を有効に活用しながら、地球環境を保全し、且つ豊かな文明社会を築く為の『現実解』として、日本の強みである環境・省エネ技術が再評価されたことは、日本の産業界に身を置く一員として、非常にうれしく思います。

トヨタ・プリウスの代表する、エンジンと電気モーターを組み合わせたHVの量産が始まったのは、1997年のことです。その技術開発の歴史は意外と古くて、1960年代の後半。当初は、伸ばした車体にガスタービンを積んで電気を起こし、モーターを回していたようですね。日本の自動車メーカーが、先端技術でHVの環境・省エネ性能をアピールする一方で、海外では非常にユニークなやり方も。台湾の代理店の社長さんが日本にいらした際、「台湾にも、プリウスに負けないHVが有るよ。ガソリンタンクとは別にLPG(液化石油ガス)用のタンクが付いていて、スイッチ一つで切り替える。燃料代が安く済むんだ(笑)」と、冗談めかして話してくれたのを覚えていますが、この類いはバイフューエル車と呼ばれ、欧米では比較的 普及しているタイプ。日本でも、ガソリン車からの改造が、認められているようです。2014年10月のパリ・モーターショーで展示された、或るコンセプトカーの搭載する次世代ハイブリッド・システムは、 2 ℓのガソリンで100kmの走行を2020年迄に実現にするという、実に野心的なモノ。大容量のリチウムイオン電池や高性能の電気モーター等、ハイテク機器は積んでいません。代わりに搭載しているのが、圧縮空気タンクとその圧力で駆動する空気圧モーターで、車の減速時に余ったエンジン動力と生じる回生エネルギーを利用して、タンクに圧縮空気を貯めておき、再発進や加速などエンジンにアシストが必要な際、タンクから空気を送ってモーターを回す仕組みだそうです。

人類の欲望が、経済的・物質的な豊かさを手放すことは無いでしょう。だからといって、その権利を、非民主的なアプローチで奪い取るようことは、絶対に許されません。前回ご紹介した低速小型EVとFCV、今回のHV、及びPHVやバイフューエル車、そして軽自動車やクリーン・ディーゼル等を含めた、様々な選択肢の中から、それぞれの長所・短所を見極め、最も目的に見合った手段を選択する。そして、大切な地球を守る為、出来る人から一歩ずつ踏み出す。50歳を過ぎたオジサンはそんな風に思って、FCVに乗ることを決めたんです。

今回は、2014年11月の朝礼で取り上げたエピソードを、下敷きにしています。もし、共感頂けるようであれば、SNSの投稿に『いいね』下さい(笑)。

※一部、表現を変更しました。

社長、水素で走る①

こんにちは。㈱昭和技研工業の岩井です。私が大学に通った頃、学生ラグビーは花形スポーツ。中でも、12月初の『早明戦』は年中行事のメインイベントで、Jリーグ発足前は、サッカーよりも遥かに人気が高かったんですよ。当時は『not-release-the-ball』がもっと厳格に適用されていて、一旦『tackle』が決まると、『loose ball』に向かってFWが全員突進し、巨大な『ruck』を形成。押し合いへし合い、密集の中では『over-the-top』等、ラフプレーも当たり前でした。レフェリーが笛を吹く度、試合の流れがブツブツ途切れた当時と比べると、現代のラグビーは、スピーディーでスマートな印象。別の競技に生まれ変わったとすら感じます。他にも、今の『try』はアメフトの『touchdown』の影響でしょうか、見た目は非常に格好良いんですけど、昔のように厳格にルールを適用したら、ほとんどが『knock-on』ですよねぇ。

では、『LSEV』という言葉は、皆さん知っていますか?こちらは、ラグビー用語ではありません(笑)。後ろにEVと付きますから、何となく電気自動車のことだなと、想像できます。正解は『Low Speed EV』、低速小型EVのことだそうです。二人乗り、最高速度60km/h 以下。1回の充電で100km程度走る、日常の近距離移動用の車です。2018年、お隣りの中国では、78.8万台の電気自動車が売れたそうですが、その約半数が『LSEV』。しかも、登録せずに違法な状態の『LSEV』の方が、正式に登録された車の台数より多いと見られていて、今、自動車業界注目のマーケットとなっているんだそうです。

2019年5月に、弊社で導入した環境対応車は『Fuel Cell Vehicle』、燃料電池車(FCV)です。大きな括りで言うと、電気自動車の一種。バッテリーの替わりに燃料電池スタックを積んでいて、充電する替わりに水素を充填。水素と酸素の化学反応で電気を起こし、モーターを回して走りますので、『水素自動車』なんて呼ぶことも有ります。EVと比較して、一回の水素充填による走行距離が長く、充填の待ち時間が短いのが特徴で、二酸化炭素や大気汚染物質を放出しない、究極のエコカーと考えられています。一方で車両価格が高いこと、水素ステーションの数が少ないことが、大きなネック。それでも私たちは、地域の中小企業の先陣を切って、環境対策に取り組む姿勢をアピールすることに決めたんです。もっとも、「社長の知的好奇心を満たすのが、本当の目的だったんでしょ?」と問われれば、私には、それを否定することは出来ませんけどね(苦笑)。

燃料電池車(FCV)の将来性については、疑問視する方も多いようですが、実際に乗ってみて、私は大きな可能性を感じています。例えば、大型トラックや路線バス等、一定のルートを行ったり来たり、物や人を配送するサービスであれば、水素ステーションをあちこちに新設する必要はありません。また、日本では電動化の進んだ鉄道も、ヨーロッパに於いては、旅客列車の約半分が今尚、ディーゼル・エンジンを動力とし、二酸化炭素と大気汚染物質を放出し続けていますから、鉄道業界に於ける燃料電池車(FCV)の潜在需要は充分です。同様に考えれば、空港と空港を行き来する航空機、港と港を行き来する船舶、温室効果ガスを排出するジェット燃料や重油が、燃料でなければならない理由があるのでしょうか。

という訳で、これから数回に渡り『社長、水素で走る』と題し、環境・省エネ技術等、過去の朝礼で取り上げた科学技術に関わるエピソードを元に、令和新時代の視点も加え、再編集してお届けします。お楽しみに。

※一部、表現を変更しました。